2018年・春
淡雪(現代俳句協会誌特別作品)
春早く生きものたちの地に目覚め
ホオジロかウグイスなのか梅の鳥
いつの間におなじく鳴いて谷渡り
名残り雪子猫の帰る道が無く
雪うさぎ真っ赤な目をしてまだ溶けず
町を背に追えば春星またたく間
淡雪に終わらない夢を咲かせて
何もかも忘れたくなる春あらた
聞こえないふりをしている黄水仙
梅の枝がいつもと別の方を指し
小さな芽(東京都区現代俳句協会35周年記念句集)
角出せば春がはじまる小さな芽
ものの芽にいつもこの後雨が降る
時々シャーペンの芯替える菜種梅雨
考えて考えあぐね蜃気楼
プリズムの中小走りにぺんぺん草
編みかけた草の冠白詰草
幼馴染みんな一緒でさくら草
隠れん坊いつしか忘れ春ショール
たんぼぼの丘までとどく浜の風
永遠と夜空へ記す花こぶし
咲けば散る人は花待ち友を待つ
姉のあと妹がはしる花の下