2017今月の草花

3月  桃

桃淡く富士の裾野の風が染め

 

【菜種梅雨】

菜の花が咲く頃の長雨を菜種梅雨といいます。菜の花はアブラナの花のことですね。春になると各地で良く見かけます。
日本では菜種油を取るために盛んに栽培されています。菜種油は食用、灯火用、工業用と用途も多くかなりの生産量のようです。少し古い資料ですが2009年の全世界における植物油の生産量は、パーム油・大豆油・菜種油・ひまわり油の順で、世界でも3番目となっています。日本では菜種油が食用油の全生産量の六割を占めています。半分以上が菜種油なんですね。こうしてみるとサラダ油といわれて売っている植物性の食用油は、殆どが菜種油だといってもいいでしょう。
やはり日本人の早春の心象風景には菜の花が付き物ですから、間違いなくどこの田舎でも菜の花は春の風物詩ですね。
そして、その菜の花が咲くころのなると、風はきたから東に移り、お彼岸のころになると昼が少しずつ長くなりはじめ、一雨ごとに暖かくなります。
そんな、春に降り続く雨を菜種梅雨と呼んでいます。梅雨と言えば今の六月頃ですね。これは、読んで字のごとく梅の実の生るころの長雨のことです。けれども、この梅雨という言葉は、長雨の代用のようなもので、日本には四種類の梅雨があります。
それぞれ季節のかわりめにあるようです。冬から春にかけての「菜種梅雨」、春から夏にかけての「梅雨」、夏から秋にかけての「すすき梅雨」、秋から冬にかけての「山茶花梅雨」と、どれも美しい季節を代表する植物の名前となっています。
秋のすすき梅雨なんて情緒のある言葉ですね。秋の七草であるすすきの季節に降る雨のことです。秋の長雨とよく言いますが、そのことですね。
そして、山茶花梅雨とは、花の少ない冬にかけて降り続く雨のことです。この時期の日本の気候は全般的に安定をしていますが、11月下旬から12月上旬にかけて晴天の日が少なく雨の多くなることがあります。これが山茶花梅雨です。このころの雨は梅雨のなかでも大きな天候の崩れが無く、比較的穏やかなしとしとと降る雨のようで、あまり知られていませんね。どちらかと言う俳句でも時雨の季節です。
こうして見ると、菜種梅雨は、春におこる春嵐も含めて、少し変化にとんだ季節の変わり目の雨だと思います。その期間もながく、桜が咲き始めるまでの花の美しい季節を長くまたがっています。この四季折々の花の名で読んでいる梅雨には、やはり日本人の自然を愛する優しさや自然とともに生きて来た草花に対する想いが込められているのだと思います。農耕との関りもやはり大きいのでしょう。
氷や雪が解けて、田畑に水が潤いだすころに、やはり菜種梅雨で雨が降り、大地の恵みを育んでくれて、稲が植えられ田畑に活気が戻ると梅雨がくるのですね。そして、稲刈りの住んだころにはすすき梅雨で台風が駆け抜けて、やがて紅葉が散り出すと山茶花梅雨がしとしと降り始める。上手くできていますね。
自然のサイクルは人間には到底逆らえません。素晴らしい風土の美しさを、花の名の付いた長雨にもつくづく感じます。
「菜種梅雨」美しい日本語ですね。俳句だけでなく、日常の暮らしのなかで忘れたくない素晴らしい言葉です。

 

 

2017年12月24日 | カテゴリー : 今月の草花 | タグ : | 投稿者 : takako