青葉抄H28年

青葉抄  平成二十八年

花水仙白波寄せる浜臨む
去年今年忘れてならぬこと多し
初雪を垣根に咲かせ朝が来る

母の後幼の残る花菜畑
春はじめかすかな風に鳥目覚め
父の背を越せぬ娘に梅の散る

朝夕な桜夜桜花吹雪
すみれ草木立の影に朝陽受け
満開の極みをとどめ花の雨

藤棚の下に夕陽の影落ちる
蝶かしら光の色か昼ひなか
五月晴風を真っ正面に受けて

初夏の風水平線を引き寄せて
蕗の葉の見る見る開く虫の屋根
獅子頭二重の鳥居奥に坐す

梅雨時雨傘もささずの道祖神
紫陽花の水滴弾く四分音符
夕焼けに明日は天気と夕鴉

木漏れ陽を溢れて止まぬ蝉時雨
夕顔に陽の暮れかねて風も無し
支えられ松の齢の緑尚

朝顔のしぼんで迫る晴れた空
榾の先塩辛とんぼすまし顔
水たまり秋を見つけて飛び跳ねる

暁に蟋蟀一匹草の主
馬ならず人も花野に歩を止める
泣く声の止んで幼のお萩食む

青さんま北の脂に火の粉飛ぶ
尾花伸び水濁るほど川の鳴る
朝風と隠れん坊して小鳥来る

ひかりへと寄り添っている冬木立
ワイパーに枯葉の積もる路線バス
染まる葉のひと葉ひと色鷹の空

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H27年

青葉抄  平成二十七年

振り返る事のみ多く年の果て
浮寝鳥水面に微か葉舟かと
祈りの灯綺羅星となる聖夜祭

目出度さをお重に詰めて年はじめ
絵双六上りを決めて諦めず
小豆粥夫の笑顔が吉を呼ぶ

朝風に追われて歩く春淡し
バレンタイン近づき夫の寝顔見る
魂の底の血潮か春はじめ

前線の予想駆け足花の雲
鳴けば鳴き姿の増えて経読み鳥
満開の花の一片定期入れ

花の蕊萼を頼りの宵の雨
古草の混じり川辺の草青む
パンケーキ焼けてうららか日曜日

水たまり跳ねて苦笑の雨蛙
親鹿に真似て子鹿の草むしり
夏豆の塩加減ほど雨しとど

風鈴のガラスの音色宵迫る
夏極み暦を忘れ終わりなく
みんみんの命短き季節生く

十五夜に親子か二匹白兎
この先の坂は険しく曼珠沙華
いつまでも母の手を振る鳳仙花

露草のぬらす靴紐スニーカー
鶺鴒の小波さざ波くもの波
宙移り夜の長々と冬至まで

聖夜の灯心にひとつ贈り物
今日までも今日からも感謝冬の朝
極月の土手の小石を空へ投げ

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H26年

青葉抄  平成二十六年

クリスマス明日へ見果てぬ夢探す
柚子湯して指で数える余す夜
鱈鍋の肉の締まれば北訛り

初春に濁世(じょくせ)を清め空晴れる
屠蘇袋静かに開けて邪気除ける
身を正し朝陽を迎え淑気満つ

早蕨の伸びて沢風におはよう
白梅の莟の声を日々記す
淡雪に消されてもこの道を歩く

カレンダー捲り八十八夜来る
紋白蝶せせらぎの音を陽と過り
頬白の影と光りを葉から葉へ

箱根路を登る新緑一号線
冷茶飲む古茶か新茶か二の次に
幼子の声軽やかに町みどり

棘のある一語かえされ白扇子
生ビールジョッキまで冷え宵の店
紫陽花の隣に停まるベビーカー

向日葵の空の天井雲が裂く
そうめんの水にさらりと風を呼ぶ
蝉鳴けば風が言の葉騒めかす

虫の声移りてつなぐ夕間暮れ
ビルとビル無機質な影夏終わる
朝顔と言えば絵日記戦後の子

十六夜のスーパームーン町の空
赤蜻蛉水面へ水輪池の空
母と子の林檎の皮を剥き比べ

目が覚めて夢か現か朝時雨
沈みゆく夕陽追掛け初紅葉
何話す訳でもなくて蜜柑剥く

冬はじめ解禁のボジョレー開ける
腕時計少し遅れて銀杏散る
寄せ鍋に進む晩酌宵の星

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H25年

青葉抄  平成二十五年

黄落の秩父神社の宵早し
腕時計気にして見てる冬帽子                             
聖夜祭夢の欠片の灯をともし

巳年開け逸るひとひを初茜
初句会晴れた空まで声通る                             
冬りんご書斎に一人お留守番

化粧水小瓶に残る春はじめ
芽キャベツの甘さ色濃く朝忙し                             
走り来る早春の大地の目覚め

目黒川花から花へ花の橋
満開を早めて過ぎる花の風                            
春の水ゆるりと海へ多摩下る

花の屋根極楽浄土とはこんな
蛇穴を出れば突然風強し                             
莢豌豆莢取る間さえ気忙しく

たかんなの力みるみる葉をつける
見下ろせば新緑の海へと続く                             
葉に染まり紫陽花の珠まだ莟

鍋の火を止めて蚊の飛ぶ通り雨
待ちぼうけぽつりと傘をさす梅雨                            
雨垂れの一日長く夏至過ぎる

パセリ手折る一人のランチメール読む
滝の音吸込まれゆく山の水                             
虹と虹降りる袂の岐れ道

朝顔のつぼみ見つける蔓の先
輪切りのレモン浮かばせてクリスタル
雨粒の落ちてどこかで遠雷か

淋しさは秋の気配か夕ぐれか
このままですむ筈がなし柿を剥く
姉は姉里の我家に虫時雨

ピーナツを割れば夜更けの鳴き烏
吹きまくる風に負けじと花芒
結局は言われて気づく実南天

噛み締める房を数えて蜜柑食む
てるてる坊主富士を湖上に紅葉散る
湖畔より社へ昇る冬霊気

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H24年

青葉抄  平成二十四年

悪しき年明けて新な幸となれ
門松の並び目出度し目出度しや                         
大地より若菜生え出す力あり

北限の灯台低く冬岬
海峡の波に浚われ初千鳥                             
万両の赤き実たわわ垣の内

跡形も無く幻か氷解け
春めくを知らす禽声空へ空へ                        
ふらここに今年幾つの子の声か

地の目覚め草も花も風も空も
スキップで帰りたくなる春うらら                              
囀りの朝を日記に書きとどめ

草木生え雨音弾む夏隣
白菖蒲川面に枝垂れ水にぬれ                              
聖五月水仕の後のカフェオーレ

奥社へと古道の続く水芭蕉
戸隠の森の産声水芭蕉                             
水芭蕉森の小道に肩を寄せ

あらたなる朝晴れやかに風光る
浮草の風もそぞろに水の際                             
紫陽花の昨日の姿はや忘れ

暗雲の白雨を連れて走り去る
雨模様それて列島猛暑来る                             
さくらんぼグラスに落とす午後三時

とめどなく雲は流れて秋彼岸
夕風にふかれ天空月を待つ                             
込みあげるひとこと探し彼岸花

小鳥来てセピアに染まるなだら坂
爽やかな朝の青空空気色                              
夕時雨買物籠と急ぎ足

露草と風のお散歩ランデブー
踏まれずに枯葉老樹に梢なす                             
セーターをザックリ被り厨事

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H23年

青葉抄  平成二十三年

初ひともじの束解かれて夕厨
初雀采は投げられ歳巡る                              
鏡餅少しひび割れ棚の上

大寒の朝二杯目のカフェ苦し
梅待つを別れを惜しむ涙かと 
万物の目覚め早春の風となる

朝の雨雪の名残りを惜しみつつ
俎板の音に鼻歌春の歌
雛祭あられに見立て金平糖

大津波傷跡消えず北の春
逝く命あまりに多く春津波 
切々と大地へ花の涙散る

つまずけば野苺の花てのひらに
バスに乗る少女追越し若葉風
たどりつく駅さへ見えず花吹雪

コンドルの海へ飛び去り夏の雨
木立よりみなみの鳴らす風の笛
山椒の青き実を付け夏に入る

なせばなるなさねばならず茄子の花
紫陽花のまだ色も無く俄雨
ひところの影を水面へ羊草

初蝉の陽を照り返す石畳
蔓の描く風のささやき瓜の花
いかづちの鳴くを遠のけ大地踏む

白粉の花の夕べに星の影
一面を柵に囲まれ草の秋
夕月夜町の暮らしの片隅に

満天の銀河の機軸一点に
吹き荒ぶ風に尾花の袖なびく 
暁は夕べに近く赤蜻蛉

キッチンに甘く林檎の熟すまで
小鳥来てベゴニアの花に隠れて 
枯葉落ちまたたくは宵の明星

終りゆく年の瀬忙し厨事
枯野よりひゅうるひゅるると風囃子
チャペルへと橇の降り立つジングルベル

 

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H22年

青葉抄  平成二十二年

初昔八峰臨む滝の寺
空高く夢の翼の破魔矢飛ぶ
ぺんぺん草大人真似てのおままごと                             

菜の花の綿雲と成り風の丘
暮れなずむひとひを惜しみ梅灯る
淡雪の垣根に降りて朝の町                                     

風そよぐ町から町へ春の詩
飾り雛箱より出され睦まじく
目を覚ませ木々の芽開く朝が来る

始まりを待つは桜の咲くを待つ                              
花冷えの町を見下ろす最上階
葉の波を越え菜の花の蝶ひらら

そよ風の調べすみれの色をして                              
暁に夜風と消える闇の声
葉裏より落ちて五月雨玉の粒

蚕豆の晴れた空色朝の卓                              
新緑の風は空へとビルを越え
梅の実の便りいつしか長電話

蔦若葉伸びては伸びる天までも                           
雨垂れにひとひの過ぎて七変化
等々力渓谷にて
万緑のオアシスとなる谷沢川

竜頭滝役の行者か夏木立                              
不動尊拝む肩ごし夏揚羽
天高く雲の波間を草の川

女郎花夕べの空を野に映す                             
新涼の白馬八方旅の宿
秋暑し空群青の昼ひなか

白舟に秋は遅しとかもめ鳴く                            
十六夜の月を隠すか雨が降る
垣根越し白粉花に雨落ちる

小鳥来て句集を捲る音静め                             
石の坐を黄葉が埋める日曜日
紅葉散るメトロ沿線小雨降る

師走来て雑踏絶えぬ広小路                              
クリスマスまた誰しもが夢の中
ミラノよりケーキの小箱聖誕祭

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H21年

青葉抄  平成二十一年

海よりの神に宿貸す松飾
齢積み無病息災七種粥
寒雀声高に鳴く昼ひなか

濃淡を筆の乱れと墨の梅
朝告げる囀りの声に目を覚まし 
ぼんぼりに照らされ雛の頬ほのか

燕来て風のなき空真二つ
三月の風がするりと指を抜け
早桜その極まりを忘れ得ず

咲くまでを一年として花桜
儚くもひとひら浮かべ花の宴
巡り来る花満開の頃惜しむ

ながながと藤より垂れ玉の雨
谷間を空まで泳ぐ鯉幟
姿なく小雀くぐもる夏木立

蚕豆をピザにそのまま日本風
いつしかに朝とあけゆく四葩雨
アイスコーヒーストローを登り下り

半夏生過ぎてこころの雲晴れる
短冊を星の川へと願の糸
しとしとと雨の粒成す百日紅

水車まで金木犀の石畳
京都まで峠幾たび萩の宿
旅土産袋にどんぐりのベレー帽

月を待つ町屑々と草の雨
仙石原にて                              
山影をうつし一面花芒
晴雲に風ひとつ無く秋の蝶

青ざめてビル飄飄と冬の空                      
クリスマスソングにスキップ駅の前
小雪を過ぎ北の空青褪める

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H20年

青葉抄  平成二十年

初御空どこからかする明日の声
紅白の巫女装束の破魔矢売る
冬波の随意に浮かぶ海千鳥

冬の星東京タワーの一点
小豆粥啜り昨日が遠ざかる
海鳥の鳴く待春の船かがり

トーストのこんがり焼けて春早し
白梅を惜しみ番の鳩の鳴く
吊り雛の伊豆の波音引き連れて

花の雲駅へとつなぐ路線バス
春うらら土手に名もなき花を見る
草藪の暗さ踏みしめ竹の秋

麦の秋波打つ空へ雲走る
しゃぼん玉とどかぬ空へ弾け飛ぶ
木橋降り水芭蕉へと心入る

昨日とは別の顔する梅雨晴間
六月の朝黒髪の絡み付く
鉄橋の低くなる土手夏の川

国はるか空へ棚引く青芒
葉に隠れ風の手枕葡萄の実
夕風のやさしく秋の星を待つ

陽は西へだらだら坂の秋はじめ
崩れ去る砂の城跡秋の海
朝夕の雲を追掛け虫合せ

防波堤かもめの声に秋高し
白富士に対し峠の初紅葉
辿り着く入江静かな秋の浜

珈琲と野菜のケーキ小六月
七五三誰もが吾身重ね見る
丘を越え銀杏黄葉の散る夕べ

果てしなく星の奏でる聖夜祭
終わりゆく日の輪を含む枯葎
読み札を残す一枚歌留多取り

2016年12月24日 | カテゴリー :

青葉抄H19年

青葉抄  平成十九年

猩猩木おしゃべりしてる星の影
昇り来る旭へ屠蘇を酌み交わす
九十九里灯台までの旅始 

陽のあたる辺りを草の芽吹き出す  
微風が少し騒がす薄氷
天も地もすべてが桜草の色

石垣島三句                                  
星の砂靴の底より春の旅
白浜へ風の梢を黒揚羽
穏やかな春の渚の忘れ貝

桜散る散るを現の船出とし
バスケット片手に花のアーチへと
花筏岩の港を押し出され

藤棚の今日満開の花の際  
ガーベラとお茶とケーキと句集など
青春の歌口をつく夏隣

網戸より風が擦り抜け宵迫る
夏帽子町角の画廊へと去る
豪徳寺招福猫の六月尽

藪雨の声木洩れ陽の波間より
紺浴衣文庫に結び背に廻す
緑陰の小さなチャペル夢の国

蝉しぐれ何処も止まぬ空の下
川風に釣舟軋む月見草
流れ星去りゆく刻のかなたへと

富士五湖の風のやさしく秋ざくら
花束を天へと捧げ紫苑咲く
山すそのたて髪となる花芒

草の秋風のゆく方の定まらず
鶏頭の尾つぽにも似た新種あり
珈琲をカフェオレにして秋深む

音も無く風泣く空の枯木星
讃美歌と燭架の尽きる聖夜祭
貼りつめる心の節目白障子

2016年12月24日 | カテゴリー :