2017今月の草花

12月  ポインセチア

ポインセチア町はルージュに化粧して

 

【冬至】

冬至は二十四節気の十二月二十二日ころで、一年を通して夜が一番長い日をいいます。勿論、夏にある夏至は逆に昼が一番長い日ですね。
この冬至の日には南瓜を食べたり柚子湯に入ったりします。昔から風邪の予防になると言われています。
その他にも、冬になるとひびわれやあかぎれになったりするので、それを防ぐために柚子湯に入ったようです。冬の肌はとても敏感で、昔から乾燥しやすかったようですね。
現代では、女性は美容と健康のために、何よりもビタミンが肝心です。冬の寒い最中のこの季節には、なるべくたっぷりとビタミンを取って美容と健康のための寒い冬に備えるというのは昔からの冬と女性との戦いでしょう。どんなに寒い冬の日でも、この柚子湯に入ると、体の芯からあったまって来るので本当に不思議です。
美容のためにと、お肌に軽く柚子をぬって石鹸の替わりにして、たっぷりビタミンを沁み込ませてみて下さい。少しはお肌が白くなったかしら?かなりの効果があるのでは無いかと期待しつつ、さっと洗い流すと自分がほんのりとさくら色に火照っているのを感じます。きっと、これが、日本に古くから伝わる柚子湯の効能に違い無いですね。
冬の乾燥は本当に女性には宿敵ですが、女性に限らず男性にも体を温めてくれる効果があるので、日本では冬至に柚子湯に入る風習は今も続いています。
この頃では良くスーパーで網に柚子を入れる柚子湯セットが売られています。都会でも古くからの風習を大切に守って行こうとしているのですね。懐かしさを感じとても良いことです。
冬至をはじめとするこうした二十四節気は春夏秋冬に今でも根強く息づいています。日本で現在使われている暦の1ヶ月を更に2当分するのが中国から伝わった二十四節気です。12月には小雪と冬至があり、1月には小寒と大寒があります。この冬至や寒の風習は今でも日常の習慣の一つですね。
このように普段無意識に過ごしているカレンダーにも、昔から言い伝えられてきた日本の古い風習が沢山残されています。忙しい毎日の生活に押し流されて気が付かずにいることも多くなりましたが、昔からの風習には、長い年月に日本人がこの国で生きて行くうえでの沢山のヒントが隠されています。もう一度、私達は先人の教えを紐解いて忘れずにその意味を知ることもこれからの未来のためにとても大切なことだと思います。
冬至がくれば、長い冬を越えるために柚子湯に入る。そんな日本人の心をいつまでも忘れたくないものですね。

 

 

2017今月の草花

11月  柿

渋柿が列車見送る田舎町

 

【鮭】

秋も深まりもう11月です。11月になるとすぐに暦の上では冬が来ますね。今年はこれまでの年よりも気温の変化が激しくすでに真冬なみに寒い日がありました。少しこの先が心配な気候です。
そんな11月がはじまりますが、こんな時期には日本では鮭が美味しい季節となります。鮭は「秋味」とも言われていて秋刀魚が美味しい初秋のころから少しずつ出回り秋刀魚よりも後の12月にも美味しいと言います。
産卵期には大群をなして川をさかのぼる姿が壮観です。昔は石狩川などでは、その時期に川に棒を立てると、密集した鮭の大群に支えられて、倒れることなく棒が直立したまま川を上って行ったと言われているくらいです。
鮭はよく「鮭は銚子かぎり」と言われていました。これも秋の魚の秋刀魚と同じですね。鮭の方は、いまでも殆どが国産だと言われる秋刀魚に比べて輸入ものが多く、種類もさまざまです。この頃は生でお鮨でも美味しいですね。キングサーモンが日本でもポピラーな食材として家庭でも食べられるようになって、気軽に生でも食べれるようになりました。
生で食べられる鮭では、近年輸入量が急増しているのがサーモントラウトと言う種類だそうです。これは国内でも養殖されていてかなり人気のようです。
面白いですね。鮭と言えばやはり秋から冬に暖かな鍋に入れって食べる石狩鍋や三平汁が最高ですが、お鮨のネタに生でも食べられるようになって、季節を越えて一年中おいしいお魚となっていますね。
それでもやはり、これからが日本では鮭の本番といったところでしょう。塩じゃけや新巻鮭など、そのままの生より、少し加工した保存の効くものがやはり昔は重宝とされてきました。俳句でも江戸時代には詠まれていますが、俳句以前の万葉集などには、やはりあまり詠まれていないようです。北の国からはなかなか美味しいままの生で京の都まで運ぶのは難しかったのでしょう。文献では乾鮭として多少登場しているようですが、和歌、連歌にはお題としては見当たらないようです。
季節感が失われつつ現代とは裏腹に、万葉の昔には珍しい貴重な魚だったのですね。まさに北の味ですね。
一年中見かけるとは言え、やはり日本の秋の魚として今でも美味しい鮭は、お料理の仕方もかなり豊富で、本当に日本人に好まれいます。初秋の頃に沖合で獲れる未成熟の稚魚「時知らず」など国産の脂の多いものは人気も値段も高い傾向です。人工的な大量生産よりも、秋に大群となって獲れる鮭の味を自然保護の観点からも見直したいものですね。

 

 

2017年12月24日 | カテゴリー : 今月の草花 | タグ : | 投稿者 : takako

2017今月の草花

10月  彼岸花

彼岸花大地の火花田んぼ道

 

【紅葉で森林浴】

もうすっかり秋ですね。野山が少しずつ色付き始めますが、このところの気候の変化に秋の紅葉は以前より遅くなりました。今年は秋らしく涼しくなるのが早く感じますが、紅葉は果たしてどうなるでしょうか。
秋になると楽しみな紅葉は、とても美しく野山や森で観賞することが森林浴になるのですよ。森林浴と聞けば初夏の新緑の頃がすぐに思い浮かびますが、常緑樹の多い森ばかりではなく、秋の紅葉を楽しむことも、やはり森林浴のひとつです。
森林浴は、日常のストレスが解消されるだけでなく、人間の体にさまざまな効果をもたらすことが解ってきているようです。
日本は四季折々の自然の変化が美しい島国です。そこで森林浴という言葉は、日本が発祥なのです。意外ですね。森林セラピーとか東洋医学に昔からあるのかと思いますが、この「森林浴」という言葉は日本から生まれたとのことなんです。
長野県上松町に樹齢200~300年ほどのヒノキが林立する森があり、そこで林野庁が1982年にイベントを開催したときに、初めて“森林浴”という言葉が生まれました。“海水浴の森版”という意味で、森の中でストレスを発散させる成分を浴びることが目的でした。
その後、このイベントをきっかけに“森林浴”が広がり、現在では、医学の論文などでも「森林浴」という言葉が日本を発祥に広がっています。
日本では、自然を大切にする文化がとても多く親しまれ四季を通してさまざまな行事があります。
紅葉も確かにそんな森林浴のひとつに違いありません。小川のせせらぎや鳥の声とともに人間をリラックスさせてくれて、神経にとても良い効果があります。これは確かに日本人なら誰でも納得しますね。ところが、もうひとつ驚くことに、この森林浴は、ガンの予防にもなるかも知れないのです。森林浴をすることで、がん細胞を攻撃する力を持つと言われるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性が上昇することや、ストレスによる免疫抑制を解除してくれることが証明されています。勿論、アンチエイジング効果もあるのです。
やはり昔の人は賢いですね。自然と共に生きることが人間には大切です。秋の紅葉の季節には、たっぷりと森林浴を楽しんで、心も体もリラックス出来たら、健康そのものです。こんな贅沢な秋の楽しみ方は他にありませんね。これから来る紅葉の季節がますます楽しみです。

 

 

2017今月の草花

9月  秋海棠

葉あいより目蓋を開く秋海棠

 

【萩の花】

萩と言えば秋の七草のひとつで、日本の秋を代表する花です。日本に古くから自生していたようですが、庭木としても良く見かけますね。とても風流な紫色の花が枝垂れて咲くところがいかにも秋らしく美しいです。
この萩の花は、秋の七草らしく読んで字のごとく「草冠」に「秋」とかきます。漢字では、正しく秋の花ですが、何故、その名前なのか、由来が気に掛かりますね。
この萩は、「生え木」からきたと言われています。「はえき」がいつの間にか「はぎ」となったようです。では、萩がなぜ生え木かと言うと、萩は、毎年古い株から沢山新しい芽をだし枝を伸ばして、葉や花を付ける木なのです。
秋の七草と言われますが、そこが少しややこしいところです。草花のように弱々しい枝垂れた花ですが、実は、案外と丈夫で草ではなく木なのです。そこで、毎年咲いては散り枯れてしまう草花よりも丈夫な古株から新しい芽を出すのです。
庭木にも多く植えられますので、草花のようですが、木であるために「生え木」と呼ばれていたのです。意外ですね。
萩が木だなんて思いもしないくらいでした。他に、例えば藤の花を見てみましょう。藤は枝垂れて咲きますが、枝は蔓状のもので、他の木に絡まり伸びてゆきますね。そこで藤棚が美しく好まれます。そうして見ると、だんだん解ってきましたね。なるほど、萩の花は枝から咲きます。その枝は弧をなして枝垂れていますが、根から生え出していて草のように細く弱いものではありません。しかも蔓ではありません。
そこで、地面から枝が生えているようでもあるという「生え木」な訳ですね。不思議なものです。秋の七草は今では桔梗を含みますが、昔は朝顔であったと言います。
朝顔は、秋になると蔓をのばして朝に花を咲かせます。ですから木ではないのですね。もしかしたら、この草と木の違いが、「お萩」という、お月見やお彼岸に供えるお菓子の呼び名となった訳かも知れません。
よく、つぶつぶの粒餡が「お萩」で秋の物。漉し餡が「牡丹餅」といい春のものと言います。昔は、あんこは小豆から作り貴重なご馳走でしたから、秋に美しく咲く萩の花を「お萩」と呼んでいたのでしょう、今のイメージでは、少しぼってりしていて不自然に感じますね。それでも粒餡の人気から「お萩」の方が好まれているようです。これは、生え木であるからかと思えば、庭木の萩のイメージで、少しこんもりと生える木に花がつぶつぶと可愛らしく咲く姿が目に浮かび、なるほど納得出来ますね。
面白いものです。そうだったのかと思うと、昔から秋の代表花であった萩の花の名前の由来には、やはりその花の特徴がいかされているものですね。

 

 

2017今月の草花

8月  合歓木

ねむの木の陰に朝風まどろんで

 

【藪入り】

八月は大人も子供も夏休みです。お盆を挟んで年に一度の大型連休をとる方や、この時期に帰省される方が多いものですね。
これは、藪入りの名残だということをご存知でしたか。藪入りという言葉は、今ではあまり聞きませんが、昔はお盆とお正月の行事の内でした。
「薮入り」とは、年に二回、お正月とお盆にあり、その昔は、住み込みの奉公人や嫁いできた嫁が実家へ帰る事ができる、唯一の休日のことだったのです。
お正月の1月16日とお盆の7月15日(旧暦8月)が、その「藪入り」の日にあたり、昔は奉公人に定休日などなく、嫁も実家に帰ることはままならなかったため、藪入りだけが、大手を振って家に帰ったり、遊びに出かけたりできる日だったのです。
この日が来るのを人々は楽しみにまっていたのですね。その後、時代は徐々に変化して、今では日曜日や定休日がある暮らしが当たり前ですが、年に二回の帰省の時期は、やっぱりこのお正月とお盆の頃が一番多いですね。
お正月は15日の小正月までは何かと忙しく休むことなどできませんでした。そしてお盆となると、十二日に草の市が立ちお供え物などを買いそろえて、十三日にご先祖様の霊を迎えます。そして、十五日には藪入りがあり、奉公人たちも親元のお墓参りをしたようです。十六日にはすぐに送り火ですから、お盆の藪入りは貴重な一日だったのですね。
嬉しいことが重なった時に「盆と正月が一緒に来たよう」といいますが、昔の奉公人には、この2つの薮入りは本当に楽しみだったに違いありません。
そして、この江戸時代の頃までの風習は、現代では大型連休となり、お正月とお盆の帰省ラッシュとなって根強く残っているのですね。
この頃ではあまり聞かないお盆の行事「藪入り」は、こういう意味がある言葉だったのです。情緒のある言葉です。
そして、面白いことに、この藪入りの日は地獄の蓋が開くと言われていたと言うのです。
何と不思議ですよね。どういう意味かというと、地獄の見張り番をしている鬼が、この日は霊が里帰りして地獄にもいないのでその見張り番の鬼もお休み。だから地獄の蓋が開いているというのです。仏教ではこの日を「閻魔の賽日」と言い伝えられていたようです。
これは意外ですね。珍しい話だと思いますが、どんな人でも「藪入り」には仕事が休めるという風習だったようです。
今ではほとんど使われていない言葉ですがその意味を調べてみるとこんな面白い風習が解りました。今でもお正月とお盆は、日本人の誰でもが楽しみな、大切な休日ですね。

 

 

2017今月の草花

7月  鈴蘭

鈴蘭の影朝風の音がする

 

【五色の短冊】

七月には七夕まつりがあります。7月7日が一般的ですが、地方によっては新旧の暦のずれや夏休みに合わせて、今でも8月に七夕祭りを行う所も多いようですね。
この七夕祭りは、織姫様と彦星様の天川をめぐるロマンスの伝説ですが、案外と知らない事が多いです。
例えば、この七夕祭りには、何故、笹竹に願い事を書いて飾るのでしょうか?案外と忘れてしまっていませんか。
笹竹は生命力が強く、真っ直ぐに伸びるところから、願い事を天に届けてくれると信じられていたからなのです。
そして、五色の短冊は、お裁縫やお習字が上達しますようにとの願いを書くものでした。
他にも、さまざまな飾りがありますが、吹き流しは織姫の機織りの糸に見立てられて機織りが上達することを願うものとされ、紙衣は、紙で着物の形を作り、着物に不自由しないようにと飾られていたようです。
そして、やはり七夕飾りに欠かせないものは五色の短冊です。この五色というのは、もとは宮廷のお祀りだった頃に五色の糸を結び飾っていたところからきていると言われます。それぞれの色には意味があって、赤、青、黄、白、黒の五色でした。
青は、人間性の向上を意味していて、徳としては「仁」となります。
赤は、感謝のこころを表し、徳としては「礼」となります。
黄は、信頼・人とのつながりを守ることを意味し、徳としては「信」となります。
白は、義務や規律を守ることを意味し、徳としては「義」となります。
黒(紫)は、学業の向上を表していて、徳としては「智」となります。
こんなに深い意味があることは、ほとんどの方が知らないのではないかと思います。徳というのは、神仏のご加護、恵みのことです。
それぞれの色の短冊に願いを書く時に、その願いの種類によってより効果的な色があり、その色を選んで書くと願い事の上達が早いと言われているようです。
ここまでくると昔の宮廷行事の名残ですね。今では、カラフルで可愛い色紙の短冊に、それぞれが願いを書くようですが、やはり、お裁縫やお習字の上達が七夕祭りらしいですね。現代では幅広く、まさに色々なお稽古事の上達を願うのも良いかも知れませんね。
七夕祭りは、夏の夜空の壮大なロマンで暑さをしのぐ、昔ながらの日本の風物詩ですね。

 

 

2017今月の草花

6月  薔薇

朝の陽のベールに隠れ薔薇満開

 

【ジューンブライド】

ジューンブライドという言葉は、もう日本でもかなり浸透して知らない方はいないのではないでしょうか。直訳すると、6月の花嫁となりますね。
何だか響きからしてロマンチックですね。日本では1967年~68年ころから言われていますが、一体その由来は何でしょうか。ちょっと気になりますね。
そこで、今回調べてみたところ、どうやら3つの説がある様です。
第一の説としては、ヨーロッパの神話からきているとのことです。ギリシャ神話に登場するゼウスの神の正妻である女神ヘラは、結婚生活の守護神と言われていました。この神話がローマに伝わり、ゼウスはユーピテルとなり、ヘラはユーノーとなったと言われています。何となく少しややこしいのですが、ユーノーが6月の女神と言われるので、六月の花嫁は女神に見守られて幸せになれると言われています。
そして、第二説です。その昔、ヨーロッパでは、結婚できない月があったと言うのです。農耕が忙しい農繁期には、誰もが忙しいので若者は結婚してはいけないと言われていました。その時期が3~5月だったのです。この時期には、若いカップルは結婚式を挙げてはいけないため、農繁期が終る6月を待って、一斉に結婚式をあげたと言います。そんな風習の名残で、6月の花嫁は皆に祝福されて幸せになれるというのです。
更にもう一つの説は、ヨーロッパでは、6月に雨が少ないというのです。雨が降らない方が花嫁には嬉しいですよね。どこの国でもやはり花嫁はウエディングドレスを着ます。そこで、花嫁には雨が少ない6月はとても幸いなのです。
あなたはどの説を取りますか?
私は、やっぱり第一説を取りたいですね。日本に渡り、浸透したのは、ホテルなどの売り込み戦略だと言われていますが、日本人はクリスマスにしてもそうですし、商売にならないと好まないのでしょうか。
昔から、神話の女神様が6月の神様だったからというのが、一番ロマンチックな気がします。六月の花嫁はローマ神話の女神様が見守っていてくれるから、ジューンブライドは幸せになれるんだという伝説が、やっぱり女性にはピッタリですね。

 

 

2017今月の草花

5月  白詰草

幾年ぞいつも咲いてる白詰草

 

【たかんなの季節】

たかんなってご存知ですか。案外、知らない方も多いのではないでしょうか。たかんなとは「筍」「竹の子」のことなんです。普段よく使う言葉としては「筍」があります。勿論、「竹の子」と同じ読み方「たけのこ」ですね。これなら誰でも知っていますよね。
たかんなは、ちょうどゴールデンウイークを挟んだ初夏のころに美味しい食べ頃を迎えます。
皆さんが大好きなお料理に、筍飯がありますよね。他には筍の煮つけや炒め物、お刺身など、さまざまなアレンジがあると思いますが、甘く煮た筍を炊込む筍飯は、初夏のご馳走です。勿論、「筍飯」夏として俳句の季語にもなっています。
それでは、「たかんな」とはどうしてそう呼ぶのでしょうか。これはタケノコの古名と言われています。タカムナとも云うようです。
タカが「竹」タケでン(ム)がノでナが「菜」っ葉のナ、そこで「竹ノ菜」から「竹菜」「タカンナ」となったという説が有力であり、他にも諸説あるらしいのですが、日本古語大辞典では何となく語呂が良く合うので、「竹菜」から来たといわれているようです。
どことなく風情があって風流ですね。「たかんな」という古い呼び名は、この頃では俳句くらいしか使わないのかもしれません。
それでも小説など他に「たかんな」がどこかに出てこないかと探してみました。調べてみると案外ありましたので、いくつか上げてみましょう。
・・・「春時分は、筍が掘って見たい筍が掘って見たいと、御主人を驚かして、お惣菜にありつくのは誰さ。・・・泉鏡花「若菜のうち」
・・・これはたとえ味噌汁に茄子か筍の煮たのにせよ御膳立をして上げるのだから・・・。・・・幸田露伴「少年時代」
・・・私は春先の筍のような勢いでずんずん成長して来た次郎や、三郎や、それから末子をよく見て、時にはこれが自分の子供かと心に驚くことさえもある。・・・島崎藤村「嵐」
・・・日本はまるで筍のように一夜の中にずんずん伸びて行く。・・・徳富蘆花「謀叛論(草稿)」
などなど、意外に沢山使われていました。やはり、晩春から初夏の勢いが筍の土から這い出す勢いに例えられていて、そこに懐かしさがあるようですね。
たかんなは筍ですから、竹の芽です。竹は春先に葉が色付き秋のように見えるために、春の竹を「竹の秋」といいます。そうして、秋になると青い葉を新しく出すので「竹の春」とも言われています。春と秋が逆さまなんですね。
そして、その季節の狭間に筍が根から這い出して芽を出します。これがどんどん伸びる様は成長の例えにピッタリですね。
竹は風流で日本的です。竹林の奥には、よくお寺や神社など古い建物が多く見られますね。稲作が中心の日本語では、春と秋が逆転するなど、竹は一年間を通して面白く親しまれていて、しかも美しいものです。中でも初夏に食べるたかんなは、昔も今も、日本人の大好物となっていますね。

 

2017今月の草花

4月 糸柳

ボートまで風のそよ吹く糸柳

 

【桜の季節】

4月は桜が満開を迎える季節です。桜は日本の花の代表ですね。この頃を待つ日本人の心は今も昔も変わらないでしょう。
それでは、この桜はいったいいつの頃からこんなに日本人に愛されていたのでしょうか。何となく気になりますね。そこで春の桜に象徴されているお花見の歴史をたどってみました。
まずは奈良時代。この頃は日本のさまざまな文化歴史の源が築かれた頃ですが、はたして桜はどうかというと、なんと、案外この時代は桜には人気がなく、寧ろ梅が人気でした。この歴史は、、『万葉集』に詠まれた梅の数から推測できます。桜を詠んだ歌が43首に対し、梅を詠んだ歌は110首です。この歌の数の違いからも奈良時代に人気を呼んでいたのが桜ではなく梅であることが解ります。
それでは、いったいいつごろから桜は梅よりも人気を呼んだのでしょうか。これは、さほど最近のことではなく平安時代の頃にはすでに梅と桜は逆転していたようなのです。
そのきっかけとなる史実に、菅原道真が遣唐使を廃止したという歴史があります。このことにより中国から来た梅の花の人気がうすれ日本古来の桜の花が人気を呼ぶようになってゆきます。この桜の人気は平安初期の『古今和歌集』に詠まれた歌の数で解ります。梅は18首に対して、桜は70首となり、この頃には人々の人気は梅よりも桜になっていることが解ります。
そして、鎌倉時代以降に一般階級に桜を愛でるお花見が浸透していったとされています。その後は戦国の武将豊臣秀吉により「吉野の花見」が開かれ、すっかり人々の間では桜の花見が春の行楽としてもてはやされてゆきます。
こうして江戸時代には、今でも花見桜としては一番多いとされる染井吉野が登場して、庶民の間の人気となり、お花見もすっかり定着します。
平成の現代まで、春と言えば桜を待つ日本人の心は、長い歴史に息づいて桜の人気は続いているのですね。あらためて歴史をたどり考えてみると感慨深いですね。
そして、この桜という名前にも、その由来は幾つもあり、奈良時代にはすでに桜と呼ばれていたのですから、それ以前の古来、桜は存在していたはずです。
一説によると、さくらとは「花が咲く」の「咲く」に花々の総称として「~等」という意味合いが合わさり「咲く花ら」~~「さくら」となったといいます。名前の由来は定かでは無く何説もの諸説があるようですが、かなり昔からさくらは春の花の代表だったようですね。
そろそろ今年も、関東では満開を迎えるころです。やはりお花見は日本の春の行楽ナンバーワンでしょう。予想では今年の桜の見頃の時期は例年よりも長いようです。春と言えば誰もが桜の花が楽しみですね。

 

 

2017今月の草花

3月  桃

桃淡く富士の裾野の風が染め

 

【菜種梅雨】

菜の花が咲く頃の長雨を菜種梅雨といいます。菜の花はアブラナの花のことですね。春になると各地で良く見かけます。
日本では菜種油を取るために盛んに栽培されています。菜種油は食用、灯火用、工業用と用途も多くかなりの生産量のようです。少し古い資料ですが2009年の全世界における植物油の生産量は、パーム油・大豆油・菜種油・ひまわり油の順で、世界でも3番目となっています。日本では菜種油が食用油の全生産量の六割を占めています。半分以上が菜種油なんですね。こうしてみるとサラダ油といわれて売っている植物性の食用油は、殆どが菜種油だといってもいいでしょう。
やはり日本人の早春の心象風景には菜の花が付き物ですから、間違いなくどこの田舎でも菜の花は春の風物詩ですね。
そして、その菜の花が咲くころのなると、風はきたから東に移り、お彼岸のころになると昼が少しずつ長くなりはじめ、一雨ごとに暖かくなります。
そんな、春に降り続く雨を菜種梅雨と呼んでいます。梅雨と言えば今の六月頃ですね。これは、読んで字のごとく梅の実の生るころの長雨のことです。けれども、この梅雨という言葉は、長雨の代用のようなもので、日本には四種類の梅雨があります。
それぞれ季節のかわりめにあるようです。冬から春にかけての「菜種梅雨」、春から夏にかけての「梅雨」、夏から秋にかけての「すすき梅雨」、秋から冬にかけての「山茶花梅雨」と、どれも美しい季節を代表する植物の名前となっています。
秋のすすき梅雨なんて情緒のある言葉ですね。秋の七草であるすすきの季節に降る雨のことです。秋の長雨とよく言いますが、そのことですね。
そして、山茶花梅雨とは、花の少ない冬にかけて降り続く雨のことです。この時期の日本の気候は全般的に安定をしていますが、11月下旬から12月上旬にかけて晴天の日が少なく雨の多くなることがあります。これが山茶花梅雨です。このころの雨は梅雨のなかでも大きな天候の崩れが無く、比較的穏やかなしとしとと降る雨のようで、あまり知られていませんね。どちらかと言う俳句でも時雨の季節です。
こうして見ると、菜種梅雨は、春におこる春嵐も含めて、少し変化にとんだ季節の変わり目の雨だと思います。その期間もながく、桜が咲き始めるまでの花の美しい季節を長くまたがっています。この四季折々の花の名で読んでいる梅雨には、やはり日本人の自然を愛する優しさや自然とともに生きて来た草花に対する想いが込められているのだと思います。農耕との関りもやはり大きいのでしょう。
氷や雪が解けて、田畑に水が潤いだすころに、やはり菜種梅雨で雨が降り、大地の恵みを育んでくれて、稲が植えられ田畑に活気が戻ると梅雨がくるのですね。そして、稲刈りの住んだころにはすすき梅雨で台風が駆け抜けて、やがて紅葉が散り出すと山茶花梅雨がしとしと降り始める。上手くできていますね。
自然のサイクルは人間には到底逆らえません。素晴らしい風土の美しさを、花の名の付いた長雨にもつくづく感じます。
「菜種梅雨」美しい日本語ですね。俳句だけでなく、日常の暮らしのなかで忘れたくない素晴らしい言葉です。

 

 

2017年12月24日 | カテゴリー : 今月の草花 | タグ : | 投稿者 : takako